ある平凡な食事の風景
菅 次郎
/ 2013-03-05
「真に平凡な日常が存在しないように、真に平凡な日誌というものもまた存在しない」
やれやれ、またこれか、と僕は思った。彼のレトリックには、時としてうんざりさせられる。
「悪いけど、僕は今そういうことを議論したいんじゃないんだ。
ただ、君も他の人たちみたいに、もっと普通のことを素朴に書いてほしい、ただそれだけのことだよ」
「確かに、僕の日誌にはほとんど事実が含まれていないかもしれない。
現代のコーラにコーラ・エキスが含まれていないようにね」
目の前に置かれた大きなアンチョビーのピザを手際よく切り分けながら、彼は続けた。
「だが、そのことに何の意味がある? 何が事実で何が虚構かなんて、本当は誰にもわかりはしない。
ことによると、書いた本人にさえ」
問題は書き手がそれを表現することを望んでいるかどうかだ、と、ピザをちびちび齧りながら彼は続けた。
僕は、子供の頃に父親から飲まされた、本物のコーラ・エキスを使ったコーラの薬臭さを思い出していた。
すでに僕は、彼との会話を早く切り上げることを望んでいた。