学問の交差点
理論物理学には「時間は流れない」という説があります。
この考え方によれば、私たちが感じる過去から未来への時間の流れは実際には存在せず、過去も未来も空間と同様に、ただそこに存在するだけだというのです。
映画を例に考えてみましょう。
観客は映画を時系列順にしか見ることができないため、ストーリーの「流れ」を感じます。
しかし、実際には映画のフィルムは全体として一度に存在しています。
時間もこれと同じように考えられるのです。
では、なぜ私たちは時間が流れていると感じるのでしょうか?
この説によれば、それは人間が常に過去の記憶しか持てないという物理的制約から生まれる幻想だといいます。
この理論は、もはや物理学と呼ぶべきか哲学と呼ぶべきか判断が難しいところです。
しかし、完全に否定することはできません。
むしろ、この考え方を採用すると、いくつかの現象がより理解しやすくなる面もあります。
かつて哲学から分離独立した物理学が、再び哲学に近づいているのは興味深い現象です。