終点の向こう側
「次、終点ですよ」
という車掌さんの言葉で目を覚ます。
2人組のサラリーマンが同じように起こされている。
車内に居たのは私とその2人組のサラリーマンだけ。
程なくして電車が停車。
だが扉は一向に開かない。
窓の外にホームの明かりも見えない。
2人組のサラリーマンは「ヤバイ、ヤバイ」とうろたえている。
この終点の地下鉄の駅は私の最寄り駅。
私はすぐに気づいた。
終点のホームに停まった後、折り返すために一度ホームより奥に電車は進み
反対側のホームに戻ってくるといういつも見る光景。
朝は発車の間隔が短いのですぐに戻ってくるけれど、
夜中なので奥に停車したまましばらく待つようだ。
数分後電車は動き出す。
2人組のサラリーマンもホッとした様子。
そして反対側のホームに停車し扉が開く。
酔っ払って爆睡していた私が悪いのだとは思いますが「次、終点ですよ」って
起こしてくれるタイミングはそこだったのかと、
半年ほど過ぎた今でも、あのホームに立つと思う時があるのです。